帯状疱疹について知っておきたいこと
帯状疱疹とは?
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、多くの人が子供の頃にかかる水痘(すいとう)、いわゆる「水ぼうそう」と同じウイルスである「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって引き起こされる皮膚の病気です。水ぼうそうが治った後も、このウイルスは私たちの体内の神経節(しんけいせつ ※神経細胞が集まっている部分)と呼ばれる神経の根元部分に静かに潜伏しています。そして、何らかの原因で体の免疫力が低下した際に、潜んでいたウイルスが再び活性化し、神経を伝って皮膚に到達し、帯状の特徴的な発疹や痛みを引き起こします。これが帯状疱疹です。
画像挿入指示:ここに、水痘・帯状疱疹ウイルスが神経節に潜伏し、免疫力低下によって再活性化して神経を伝って皮膚に症状を出す様子を模式的に示したイラストを配置。潜伏中はウイルスが眠っているような表現、再活性化時はウイルスが活発に動き出すような表現が良いでしょう。
原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス」について
帯状疱疹の原因となるのは、「水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus: VZV)」というヘルペスウイルスの一種です。このウイルスに初めて感染すると、一般的には水ぼうそうとして発症します。水ぼうそうは、全身に痒みを伴う赤い発疹や水ぶくれができる病気で、多くは子供時代に経験します。一度水ぼうそうにかかると、体内にこのウイルスに対する免疫ができますが、ウイルス自体が完全に排除されるわけではありません。ウイルスは、症状が治まった後も、主に背骨の近くにある後根神経節(こうこんしんけいせつ ※脊髄から出て皮膚や筋肉へ向かう知覚神経の細胞体が存在する場所)や顔面の三叉神経節(さんさしんけいせつ ※顔面の感覚を脳に伝える三叉神経の細胞体が存在する場所)といった神経細胞が集まる場所に潜伏し続けます。そして、数十年という長い期間、症状を出さずに潜んでいることがあります。
画像挿入指示:ここに、水ぼうそう発症時の子供のイラストと、治癒後にウイルスが神経節に潜伏する様子を示したイラストを並べて配置。水ぼうそうの症状(全身の発疹)と、潜伏するウイルスのイメージを対比させると分かりやすい。
この潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが、何らかのきっかけで再び活動を始めると、今度は帯状疱疹として症状が現れます。つまり、水ぼうそうと帯状疱疹は、同じウイルスが原因でありながら、初感染時と再活性化時で異なる病像を示すのです。
なぜ再活性化するのか
潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化する主な原因は、体の免疫力の低下です。私たちの体には、ウイルスなどの外敵から身を守るための免疫システムが備わっています。この免疫システムが正常に機能している間は、潜伏しているウイルスも抑え込まれています。しかし、様々な要因によって免疫力が低下すると、ウイルスが再び増殖しやすくなり、神経細胞の中で再活性化します。
免疫力が低下する具体的な要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢:年齢とともに免疫機能は自然と低下していく傾向があります。特に50歳を過ぎると帯状疱疹の発症率が上昇することが知られています。
- 疲労やストレス:過労や精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、免疫細胞の働きを弱めることがあります。
- 病気や治療による影響:糖尿病やがん、HIV感染症などの持病がある場合や、ステロイド薬や免疫抑制剤(※免疫の働きを抑える薬)などによる治療を受けている場合は、免疫力が低下しやすくなります。
- その他:大きな手術や怪我、不規則な生活習慣なども免疫力低下の誘因となることがあります。
これらの要因が複合的に関与し、免疫力が低下することで、潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症すると考えられています。
画像挿入指示:ここに、加齢、ストレス、疲労、病気など、免疫力低下の要因をアイコンなどで分かりやすく示したイラストを配置。それぞれの要因が免疫細胞(盾を持ったキャラクターなどで表現)を弱らせるようなイメージが良いでしょう。
主な症状
帯状疱疹の症状は、特徴的な皮膚症状と痛みが主体となります。多くの場合、皮膚症状が現れる数日前から、体の片側の特定の神経に沿ってピリピリ、チクチクとした痛みや違和感、かゆみといった初期症状が現れます。
初期症状
帯状疱疹の初期症状は、皮膚に発疹が現れるよりも先に感じられることが多いです。具体的には以下のような感覚です。
- 皮膚の違和感・かゆみ:特定の場所に軽いかゆみや、何かが触れているような違和感を覚えることがあります。
- ピリピリ・チクチクする痛み:神経が刺激されることで、電気が走るような、あるいは針で刺されるような鋭い痛みを感じることがあります。
- ズキズキする痛み:持続的な鈍い痛みや、拍動に合わせたズキズキとした痛みが生じることもあります。
画像挿入指示:ここに、皮膚のピリピリ感やチクチクする痛みを訴える人物のイラスト、またはそのような感覚を抽象的に表現したイメージ画像を配置。
これらの初期症状は、体の左右どちらか一方の、特定の神経の支配領域に沿って現れるのが特徴です。この段階ではまだ発疹がないため、他の病気(例えば筋肉痛や神経痛など)と間違われることもあります。初期症状は通常、数日から1週間程度続きます。
発疹の経過と特徴
初期症状の後、同じ場所に赤い斑点状の発疹が現れます。この発疹は、時間とともに以下のように変化していきます。
- 赤い斑点(紅斑:こうはん):まず、神経に沿って帯状に赤い小さな斑点が現れます。この時点でも痛みを伴うことが一般的です。
画像挿入指示:ここに、帯状疱疹の初期症状である赤い斑点が皮膚に現れている実際の症例写真、またはリアルなイラストを配置。
- 小さな水ぶくれ(水疱:すいほう):赤い斑点の上に、小さな水ぶくれが多数集まってできます。水ぶくれの中には透明な液体が溜まっています。
画像挿入指示:ここに、小さな水ぶくれが帯状に集まってできている状態の実際の症例写真、またはリアルなイラストを配置。
- 膿疱(のうほう ※膿がたまった水ぶくれ):水ぶくれの中の液体が白濁し、膿が溜まった状態(膿疱)になることがあります。この時期には発熱やリンパ節の腫れを伴うこともあります。
画像挿入指示:ここに、水ぶくれが膿疱に変化した状態の実際の症例写真、またはリアルなイラストを配置。
- びらん・潰瘍(かいよう):水ぶくれや膿疱が破れると、皮膚がただれた状態(びらん)になったり、さらに深くえぐれて潰瘍になったりすることがあります。
- かさぶた(痂皮:かひ):破れた水ぶくれや膿疱は、次第に乾燥してかさぶたになります。かさぶたは通常、2~3週間程度で自然に剥がれ落ちます。
画像挿入指示:ここに、治癒過程のかさぶたが形成されている状態の実際の症例写真、またはリアルなイラストを配置。
発疹は、最初に現れた場所から徐々に広がり、神経の走行に沿って帯状の配列をとるのが典型的な特徴です。このため「帯状疱疹」という名前がついています。
画像挿入指示:ここに、発疹の経過(紅斑→水疱→膿疱→痂皮)を時系列で並べたイラスト、または写真を配置。各段階の特徴が分かるようにする。
発疹が現れる部位
帯状疱疹の発疹は、体の左右どちらか一方の神経支配領域に沿って、帯状に現れるのが大きな特徴です。全身のどこにでも現れる可能性がありますが、特に以下の部位に好発します。
- 胸から背中にかけて(肋間神経領域):最も多く見られる部位で、体の片側の胸部、腹部、背中に帯状に発疹が出ます。
画像挿入指示:ここに、胸部から背部にかけて帯状に発疹が出ている症例のイラスト(または写真)。体の片側であることを明確に示す。
- 顔面(三叉神経領域):額、目の周り、頬、顎などに現れることがあります。特に目の周りにできた場合は、角膜炎や結膜炎などの眼合併症を引き起こす可能性があり、注意が必要です(詳細は「合併症」の項で解説します)。
画像挿入指示:ここに、顔面(特に目の周りや額)に帯状疱疹が出ている症例のイラスト(または写真)。眼の近くであることを強調する。
- 頭部:頭皮や髪の生え際に発疹や痛みが出ることがあります。
- 首や肩、腕
- お尻や太もも
通常、発疹は体の正中線(体の中心線)を越えて反対側に広がることはありません。ただし、免疫力が著しく低下している場合には、広範囲に発疹が出たり(汎発性帯状疱疹 ※全身に広がる帯状疱疹)、体の両側に出たりすることもあります。
痛みの種類と程度
帯状疱疹の痛みは、この病気の最もつらい症状の一つであり、その種類や程度には個人差が大きいです。
- ズキズキ、ジンジンする痛み:持続的で、焼けるような、あるいは疼くような痛みです。
- ピリピリ、チクチクする痛み:電気が走るような、針で刺されるような鋭い痛みです。
- 締め付けられるような痛み
- 触れるだけで痛い(アロディニア ※通常は痛みを感じないような軽い接触でも痛みを感じる状態):衣服が擦れたり、軽く触れただけでも激しい痛みを感じることがあります。
画像挿入指示:ここに、様々な痛みの種類(ズキズキ、ピリピリ、焼けるような痛みなど)を表現する抽象的なイメージ画像やアイコンを複数配置。
痛みは、発疹が現れる前から始まり、発疹が出ている間、そして発疹が治った後も続くことがあります。特に、発疹が治った後も長期間痛みが続く状態を「帯状疱疹後神経痛(PHN:Postherpetic Neuralgia)」と呼び、生活の質を大きく低下させる原因となります(詳細は「合併症」の項で解説します)。
痛みの程度は、軽いものから、夜も眠れないほどの激しいものまで様々です。一般的に、高齢者ほど痛みが強く出やすく、帯状疱疹後神経痛にも移行しやすい傾向があります。
一般的な治療法
帯状疱疹の治療の主な目的は、ウイルスの増殖を抑えること、痛みを和らげること、そして合併症(特に帯状疱疹後神経痛)を防ぐことです。治療は、できるだけ早期に開始することが重要です。
主な治療法には以下のものがあります。
抗ウイルス薬
帯状疱疹治療の中心となるのが抗ウイルス薬です。水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑制し、症状の悪化を防ぎ、治癒までの期間を短縮する効果があります。また、帯状疱疹後神経痛の発症リスクを軽減する効果も期待できます。
- 効果:ウイルスのDNA複製を阻害することで、ウイルスの数を減らします。
- 早期治療の重要性:発疹が現れてから72時間(3日)以内に服用を開始することが最も効果的とされています。治療開始が遅れると、ウイルスの増殖が進んでしまい、薬の効果が十分に得られにくくなる可能性があります。そのため、帯状疱疹を疑う症状(特に体の片側の痛みやピリピリ感、それに続く発疹)が現れたら、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。
画像挿入指示:ここに、カレンダー上で発症から72時間以内を強調表示し、薬のアイコンを添えたイラストを配置。「早期治療がカギ!」といったキャッチコピーも効果的。
- 種類:アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどの内服薬が主に用いられます。重症の場合や、顔面麻痺、髄膜炎などの合併症が疑われる場合は、入院して点滴で抗ウイルス薬を投与することもあります。
画像挿入指示:ここに、抗ウイルス薬の錠剤やカプセルのイメージ画像を配置。
- 服用期間:通常、7日間程度服用します。症状が改善しても、医師の指示通りに最後まで飲み切ることが重要です。
痛み止め(鎮痛薬)
帯状疱疹の痛みは非常に強いことが多いため、痛みをコントロールすることも治療の重要な柱です。
- 消炎鎮痛薬(NSAIDs:エヌセイズ ※非ステロイド性抗炎症薬):ロキソプロフェンやイブプロフェンなど、炎症を抑え痛みを和らげる薬です。比較的軽度の痛みに用いられます。
- アセトアミノフェン:消炎作用は弱いですが、比較的安全性が高く、NSAIDsが使いにくい場合などに用いられます。
- 神経障害性疼痛治療薬:プレガバリンやミロガバリン、デュロキセチンなど、神経の過敏な興奮を抑えることで、神経障害による痛みを和らげる薬です。帯状疱疹の痛みや帯状疱疹後神経痛に対して効果が期待できます。
- オピオイド鎮痛薬:痛みが非常に強い場合には、トラマドールやタペンタドールなどの弱オピオイドや、モルヒネなどの強オピオイドが使用されることもあります。医師の厳格な管理のもとで使用されます。
- その他:三環系抗うつ薬やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)なども、帯状疱疹後神経痛の治療に用いられることがあります。
画像挿入指示:ここに、様々な種類の痛み止めの錠剤やカプセルが並んでいるイメージ画像を配置。
痛みの種類や強さに応じて、これらの薬が単独または組み合わせて処方されます。
塗り薬(外用薬)
皮膚症状の改善や保護、細菌による二次感染の予防のために塗り薬が使われることがあります。
- 抗ウイルス薬の軟膏:アシクロビル軟膏などがありますが、内服薬に比べて効果は限定的です。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の軟膏・クリーム:炎症や痛みを和らげる目的で使われることがあります。
- 抗菌薬の軟膏:水ぶくれが破れて細菌感染を起こした場合や、その予防のために使われます。
- 保護剤:ワセリンなど、患部を保護し乾燥を防ぐために使われます。
画像挿入指示:ここに、チューブから軟膏を出す様子や、患部に軟膏を塗っている様子のイラストを配置。
その他
- 安静:体の免疫力を高めるために、十分な休息と睡眠をとることが大切です。無理をせず、安静に過ごしましょう。
画像挿入指示:ここに、ベッドで静かに休んでいる人物のイラストを配置。穏やかな雰囲気が望ましい。
- 患部の保護と清潔:患部を冷やしすぎたり、温めすぎたりしないように注意し、清潔に保ちます。水ぶくれは自分で破らないようにしましょう。衣類は、患部に刺激の少ないゆったりとしたものを選びましょう。
- 神経ブロック:痛みが非常に強い場合や、薬物療法だけでは痛みが十分にコントロールできない場合に、ペインクリニックなどで神経ブロック注射が行われることがあります。局所麻酔薬やステロイド薬を神経の周りに注射することで、痛みの伝達を遮断します。
予防方法
帯状疱疹の発症を完全に防ぐことは難しいですが、発症リスクを減らしたり、発症しても軽症で済ませたりするための予防方法があります。
ワクチン接種について
帯状疱疹の予防には、ワクチン接種が有効な手段の一つです。現在、日本で承認されている帯状疱疹ワクチンには、主に以下の2種類があります。
- 弱毒生水痘ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」など)
- 対象年齢:原則として50歳以上。
- 効果:帯状疱疹の発症を約50~60%減らし、帯状疱疹後神経痛の発症も約60~70%減らす効果があるとされています。1回の接種で済みます。
- 費用:医療機関によって異なりますが、一般的に数千円から1万円程度(自費診療)。
- 副反応:接種部位の赤み、腫れ、痛み、発熱、発疹などがみられることがあります。まれにアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応が起こる可能性もあります。生ワクチンのため、免疫機能が著しく低下している方(抗がん剤治療中の方、免疫抑制剤を使用中の方など)や妊婦は接種できません。
- 受ける際の注意点:接種前に医師とよく相談し、自身の健康状態や既往歴などを伝えることが重要です。
- 不活化ワクチン(シングリックス筋注用)
- 対象年齢:原則として50歳以上。また、18歳以上で帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる方も対象となります(医師の判断による)。
- 効果:帯状疱疹の発症を50歳以上で約97%、70歳以上で約91%減らすと報告されており、非常に高い予防効果が期待できます。帯状疱疹後神経痛の予防効果も高いとされています。2ヶ月間隔で2回の筋肉内接種が必要です。
- 費用:医療機関によって異なりますが、1回あたり2万円~3万円程度(合計4万円~6万円程度)と、生ワクチンに比べて高額になる傾向があります(自費診療)。
- 副反応:接種部位の痛み、腫れ、赤み、筋肉痛、疲労感、頭痛、発熱などが比較的多くみられますが、多くは数日以内に軽快します。まれにアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応が起こる可能性もあります。不活化ワクチンのため、免疫機能が低下している方でも接種可能ですが、医師との相談が必要です。
- 受ける際の注意点:2回の接種を完了することで十分な効果が得られます。接種スケジュールを守ることが大切です。接種前に医師とよく相談してください。
画像挿入指示:ここに、医師が患者にワクチンを接種している様子のイラスト、またはワクチンのバイアルと注射器のイメージ画像を配置。「50歳からの帯状疱疹予防」といったメッセージを添えるのも良い。
どちらのワクチンも、帯状疱疹の発症を完全に防ぐものではありませんが、発症リスクを大幅に下げ、もし発症しても症状を軽くする効果が期待できます。費用や副反応、接種回数などが異なるため、医師とよく相談し、自分に合ったワクチンを選ぶことが大切です。
日常生活で免疫力を維持するためにできること
帯状疱疹は免疫力の低下が大きな原因となるため、日常生活で免疫力を高く保つことが予防につながります。
- バランスの取れた食事:タンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く摂取し、腸内環境を整えることも免疫力維持に役立ちます。
- 十分な睡眠:質の良い睡眠を十分にとることで、免疫細胞の働きが活性化されます。
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことは、血行を促進し、免疫力を高める効果が期待できます。
- ストレス管理:趣味やリラックスできる時間を持つなどして、ストレスを溜め込まないように工夫しましょう。
- 規則正しい生活:生活リズムを整え、体に負担をかけないように心がけましょう。
画像挿入指示:ここに、バランスの取れた食事(野菜、果物、魚、肉など)、適度な運動(ウォーキングする人)、質の高い睡眠(眠っている人)、ストレス解消(趣味を楽しむ人)をそれぞれ示すアイコンやイラストを組み合わせたものを配置。「免疫力アップで備えよう!」のようなメッセージも良い。
発症しやすい人・リスク要因
以下のような人は、帯状疱疹を発症しやすい、あるいはリスクが高いと考えられています。
- 年齢(特に50歳以上):加齢に伴い免疫力が低下するため、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症率が急激に上昇します。日本の成人の9割以上が水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したことがあるとされており、多くの人が発症する可能性があります。
- 疲労やストレス:過労や精神的なストレスは免疫力を低下させる大きな要因です。
- 免疫力が低下する持病がある人や治療中の人:
- 糖尿病
- がん(特に血液がん)
- HIV感染症
- 膠原病(こうげんびょう ※関節、筋肉、皮膚、内臓などの結合組織に炎症や変性が起こる病気の総称)などの自己免疫疾患
- ステロイド薬や免疫抑制剤、抗がん剤などによる治療を受けている人
- 臓器移植を受けた人
- 水ぼうそうにかかったことがある人:水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜伏しているため、免疫力が低下すると再活性化する可能性があります。
画像挿入指示:ここに、高齢者、疲れている人、ストレスを感じている人、持病のある人(例:糖尿病の検査器具を持つ人)などを抽象的に示したイラストやアイコンを配置。「こんな人は要注意」といった注意喚起を促すデザインにする。
これらのリスク要因に当てはまる場合は、特に日常生活での免疫力維持や、ワクチン接種による予防を検討することが推奨されます。
合併症
帯状疱疹は、適切な治療を行えば多くの場合治癒しますが、いくつかの合併症を引き起こす可能性があります。特に高齢者や免疫力が低下している人は注意が必要です。
帯状疱疹後神経痛(PHN:Postherpetic Neuralgia)
帯状疱疹の合併症の中で最も一般的で、患者さんを悩ませるのが帯状疱疹後神経痛(PHN)です。これは、皮膚の発疹が治った後も、焼けるような、あるいはズキズキとした持続的な痛みが数ヶ月から数年にわたって続く状態を指します。
- どのような症状か:
- 持続する焼けるような痛み、電気が走るような痛み、締め付けられるような痛み。
- 衣服が触れるだけで激痛が走る(アロディニア ※通常は痛みを感じないような軽い接触でも痛みを感じる状態)。
- 感覚が鈍くなる、または逆に過敏になる。
- かゆみを伴うこともある。
- これらの痛みにより、睡眠障害、食欲不振、うつ状態など、生活の質(QOL)が著しく低下することがあります。
画像挿入指示:ここに、帯状疱疹後神経痛による痛みに苦しむ高齢者のイラストを配置。痛みの辛さが伝わるような表情やポーズが良い。背景にカレンダーがめくれていく様子を描き、痛みが長引くイメージを添えるのも効果的。
- 発症のメカニズム:帯状疱疹ウイルスが神経を傷つけることで、神経が過敏になったり、異常な信号を脳に送り続けたりするために起こると考えられています。
- 発症しやすい人:高齢者(特に60歳以上)、帯状疱疹の初期症状(特に痛みや発疹)が重かった人、顔面や頭部に帯状疱疹が出た人、免疫力が低下している人などがPHNに移行しやすいとされています。
- 治療法:PHNの痛みは通常の痛み止め(NSAIDsなど)では効果が薄いことが多く、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリンなど)、抗うつ薬(アミトリプチリン、デュロキセチンなど)、オピオイド鎮痛薬、外用薬(リドカインテープなど)、神経ブロック注射などが用いられます。治療は長期にわたることがあり、根気強い対応が必要です。
- 予防の重要性:PHNへの移行を防ぐためには、帯状疱疹の初期段階で抗ウイルス薬による治療をできるだけ早く開始することが最も重要です。また、痛みが強い場合は我慢せず、早期から積極的に痛み治療を行うことも大切です。ワクチン接種もPHNの発症リスクを減らす効果が期待できます。
目や耳の合併症
帯状疱疹が顔面、特に三叉神経の第一枝である眼神経領域(おでこや目の周り)や、顔面神経・聴神経領域(耳の周り)に発症した場合、目や耳に関連する重篤な合併症を引き起こすことがあります。
- 眼部帯状疱疹:
- 症状:目の充血、痛み、視力低下、かすみ目、まぶしさなど。
- 合併症:角膜炎、結膜炎、ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎、緑内障、視神経炎などを引き起こし、最悪の場合、失明に至ることもあります。
画像挿入指示:ここに、目の周り(額や上まぶた)に帯状疱疹の発疹が出ている顔のイラスト、または実際の症例写真を配置。目の充血なども表現できると良い。
- 対応:目の症状がある場合は、速やかに眼科を受診し、専門的な治療を受ける必要があります。
- ラムゼイ・ハント症候群:
- 原因:顔面神経と聴神経が水痘・帯状疱疹ウイルスによって侵されることで発症します。
- 症状:耳の痛み、耳介や外耳道の発疹、顔面神経麻痺(顔の片側が歪む、目が閉じにくい、口角が下がるなど)、めまい、難聴、耳鳴りなどが現れます。
画像挿入指示:ここに、ラムゼイ・ハント症候群の典型的な症状(耳の周りの発疹と顔面麻痺)を示した顔のイラストを配置。顔の左右非対称性を分かりやすく表現する。
- 対応:早期に耳鼻咽喉科を受診し、抗ウイルス薬やステロイド薬による治療を開始することが重要です。治療が遅れると、顔面神経麻痺や難聴が後遺症として残ることがあります。
その他の合併症
- 皮膚の細菌感染:水ぶくれが破れたところに細菌が感染し、化膿することがあります。これを防ぐためには、患部を清潔に保つことが大切です。
- 瘢痕(はんこん ※傷あと):発疹が治った後に、皮膚に跡が残ることがあります。特に症状が重かった場合や、細菌感染を起こした場合に残りやすいです。
画像挿入指示:ここに、治癒後のかさぶた、または瘢痕が残った状態の皮膚のイラストまたは写真を配置。可能であれば、軽微なものとやや目立つものの両方を示す。
- 運動神経麻痺:まれに、帯状疱疹が運動神経に影響を及ぼし、腕や足に力が入らなくなるなどの麻痺症状が出ることがあります。
- 髄膜炎・脳炎:非常にまれですが、ウイルスが中枢神経系に広がり、髄膜炎や脳炎を引き起こすことがあります。発熱、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
受診の目安と診療科
帯状疱疹は、早期発見・早期治療が非常に重要な病気です。治療開始が遅れると、症状が悪化したり、帯状疱疹後神経痛などのつらい合併症に移行するリスクが高まったりします。
どのような症状が出たら医療機関を受診すべきか
以下のような症状に気づいたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
- 体の左右どちらか一方に、ピリピリ、チクチクとした痛みや違和感、かゆみが数日間続く。
- その後、同じ場所に赤い発疹や小さな水ぶくれが帯状に現れた。
- 特に、顔や頭部に上記のような症状が出た場合。
- 痛みが非常に強い場合。
画像挿入指示:ここに、心配そうな表情で医師に相談している患者と、優しく対応する医師のイラストを配置。「あれ?と思ったら早めに相談」といったメッセージを添える。
自己判断せずに、専門医の診察を受けることが大切です。
何科を受診すればよいか
- 皮膚科:帯状疱疹の診断と治療は、基本的には皮膚科が専門です。皮膚の症状(発疹、水ぶくれなど)や痛みがある場合は、まず皮膚科を受診しましょう。
- 眼科:目の周りやおでこに発疹が出たり、目の充血、痛み、視力低下などの症状がある場合は、眼合併症の可能性があるため、皮膚科と並行して、または皮膚科医の指示で速やかに眼科を受診してください。
- 耳鼻咽喉科:耳の周りに発疹が出たり、顔面麻痺、めまい、難聴などの症状がある場合(ラムゼイ・ハント症候群が疑われる場合)は、耳鼻咽喉科を受診してください。
- ペインクリニック科・麻酔科:痛みが非常に強い場合や、帯状疱疹後神経痛に移行してしまった場合は、痛みの専門治療を行うペインクリニック科や麻酔科での治療が有効なことがあります。皮膚科医からの紹介で受診することが一般的です。
症状や部位に応じて、適切な診療科を受診することが、早期回復と合併症予防につながります。
ここに掲載した情報は一般的なものであり、全ての患者さんに当てはまるわけではありません。帯状疱疹を疑う症状がある場合や、治療・予防について詳しいことをお知りになりたい場合は、必ず医師にご相談ください。